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『レ・ミゼラブル』映画感想 - アン・ハサウェイとヒュー・ジャックマンの凄まじい顔芸

アン・ハサウェイが出てるから観に行った『レ・ミゼラブル』だけど、ド迫力の顔面アップの連続で、2時間40分の長さも忘れる怒涛の展開だった。

 

 顔を撮れ!

f:id:debabocho:20121230185413j:plainとにかく顔。顔が命。アン・ハサウェイのたれ目がうるんで、くちびるが震え、娼婦に身をやつす境遇の絶望が、娘コゼットへの愛が、ストレートに伝わってくる。サマンサ・バークスの歌唱力も凄かった。顔がよく分かるから、歌の繊細さも力強さも、映像として伝わってくる。

気にも留めてなかった胸毛俳優ヒュー・ジャックマンも凄い。歌唱力もさることながら、あんなに目が大きい役者だとは思わなかった。アクション映画に出てたときより10倍イイ男に見える。やるじゃん胸毛男マン!

ミュージカル映画で顔のアップを撮るのは、やっぱり舞台劇で見えない部分をみせて差別化しようってことなんだろうか。カメラの被写体深度も、鼻の先がボケるぐらい浅くして、表情に集中できるように撮っている。

ちなみにヒロイン、コゼット役のアマンダ・セイフライドは周りに喰われて存在感希薄、ラッセル・クロウはアップひかえめ、エディ・レッドメインは『ヒック』でのきちがい演技が印象に残りすぎて、いつサイコ化するのかとヒヤヒヤしてた。

ひとは希望を失わない。ひとは自由を求め続ける。

レ・ミゼラブルは子供の頃児童文学版で読んだ程度だったけど、いま見ると実にフランスらしいテーマをもった作品だった。法の鎖につながれて、貧困にむしばまれて、悲惨な境遇に生きる人々。だが、人の自由はつなぎ止めることはできない、愛はむしばむことはできない。そんな彼らの希望が、6月蜂起とともに一つにかさなり、怒涛のクライマックスへとなだれ込む。

160分の上映時間でもおさまり切らなかったのか、通常のセリフは少なくほとんど歌いっぱなし。物凄いスピードで物語が流れていくけれど、展開が早すぎてつまづくということはなかった。その間に挟み込まれるダイナミックなCGIによるフランスの風景が、物語の背景をきちんと語ってるからじゃないだろうか。

実際の舞台が観たくなる

映画の撮影手法で見せられたミュージカルを見ると、逆に実際のミュージカルではどうだったんだろう、という好奇心をくすぐられる。6月蜂起前にカットバックの連続で4人が自らの意志を歌い、それがひとつの曲となる展開は、実際の舞台ではどう表現されるんだろう。10年近く前、ヴォルテールの『キャンディード』を観た思い出がよみがえる。 また舞台に足を運びたくなった。