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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

海外ドラマ: スーパーナチュラル 66話『幽霊病』

S!DTVの第4シーズン放送から、たまたま定期録画の時間にひっかかって観るようになった『スーパーナチュラル』だけれど、正直、思っていたより面白い!

“イケメン兄弟ふたり旅”という荒っぽい説明を聞いて、勝手に耽美的な、ターゲットを女性向けに絞ったものかと思っていたら、そこまで舐めたもんじゃなかった。割とストレートに下品(まあそれが女性ウケするのかもしれんが)で楽しいし、お話もバリエーションに富んでいるし、神話伝承をベースとした設定も凝っているしで、退魔モノの名作『バッフィー・ザ・バンパイアスレイヤー』に近い雰囲気がある。

第4シーズンはシーズンプレミアで、キリスト教圏の天使と悪魔の抗争を前面に押し出してきたので、その流れでずっと行くのかなと思ったら、まだまだ1話完結で様々な悪魔妖怪を登場させた、コミカルなストーリーを続けるようだ。第4-4話は人狼ルー・ガルー、そして第4-6話は、なんと日本の妖怪だった。

――とつぜんチワワすら怖がるようになってしまったディーン。訪れた街で怪死事件を追ううちに、その原因である“幽霊病”に感染してしまったのだ。サムとボビーは日本の古い伝説から、妖怪ぶるぶるが原因であると突き止める――

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“幽霊病”(ゴースト・シックネス)は、もともとはアメリカ・インディアンの伝承に結びついたアメリカの風土的な精神障害の一種のようだが、今回この病気に超自然的な意味づけをするために、日本の妖怪“ぶるぶる”が使われる。まさかアメリカのドラマに、ゲゲゲの鬼太郎ぐらいにしか出てこないマイナーな妖怪が出てこようとは思わなかった(というか、ゲゲ鬼太好きでなかったらこんなふざけた名前のお化け、実在するとも思わんよ)。

しかしこの妖怪ぶるぶる(震々)、じつに設定にあってる。恐怖によって人を死に至らしめるとかいう設定は創作か、アメリカ伝承側から採られたものだろうが、その容姿はまさに典型的な日本の“幽霊”だ。ぶるぶるは臆病神の一種だそうがだが、ぶるぶるに取り付かれたディーンの行動は、まさに臆病そのもの。スタッフが意外と良くリサーチしていたのだろうか。

あるいは、“幽霊病”と“ぶるぶる”という異なる文化の似た伝説を結び付けてみたら、その本質はぴったり一緒だった、ということなのかもしれない。結局は、どんな民族、宗教であろうと、神話伝承は同じヒトという種族の心理・行動を描いたものなんだから。


世界中の悪魔妖怪と闘う物語は、水木しげるから続く日本の漫画の十八番。でも考えてみたら人種の坩堝たるアメリカこそ、そういう物語を紡ぐにはぴったりなんだよな。『バッフィー』、『スーパーナチュラル』と、現代ホラー・ファンタジーのバリエーションが増えていくのを観ていると、ひょっとしたら将来、まるっきり日本の退魔漫画そっくりなシリーズが現れてもおかしくないと思えてしまう。