Twitterを使った『ロー&オーダー:UK』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第3シーズン。本国では第5,6シーズンとして放送された。
あらすじ
英国検察庁ロンドン支局では局長のキャッスルが退任し、後任のヘンリー・シャープ検事が指揮を執ることになる。また不祥事で退職したスティール検事の交代として、ジェイコブ・ソーン検事補がアリーシャ・フィリップス検事補とともに裁判に取り組んでいく。
一方セントラルロンドン署では、ロニー・ブルックス刑事とマット・デブリン刑事が、ナタリー・チャンドラー警部補のもと凶悪犯罪を捜査する。社会の恐るべき貧困が生み出す犯罪に直面する刑事たち。そんななかデブリンは社会の歪みの犠牲となり、捜査は後任のサム・ケイシー刑事に引き継がれていく……。
レビューリンク
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全話レビュー
3-1『不適格者』
緊急外来で続く謎の死。偶然が重なり起きる医療事故には、原因も責任のありかもないのか? 原作初期のクラシックなエピだが、描かれる組織の体質問題は、20年後の英国を舞台にしてもまったく古びることがない。新検事補はヴァルカン人風の無感情人間! ★4
3-2『親の都合』
連れ去られた幼児はどこにいる? ブルックス刑事と被害者の母親の奇妙な友情が、最悪の事実を暴き出す。その衝撃度は原作エピより多少インパクトが落ちる。裁判編も子育て環境の劣悪さが今一歩伝わってこない。母親役が美人のモデル体型だからかな?★3
3-3『一生の悔恨』
殺された東欧系の娼婦。彼女を愛し、憎んだのは誰だったのか? 男の「気の迷い」が何を生んだのかを知らせる最後の告白はあまりにも残酷でインパクトがある。故に、もうすこし犯人役の演技に迫力がほしい。犯人がわかりやすすぎるのも玉に瑕。★4
3-4『浅はかな企み』
連続銃殺事件を起こした覆面二人組。4人の死を招いた事件の原因は? 傍観者はほんとうに傍観していただけなのかという疑問を突き詰め、小さな欲を暴く。全体的にスピード感のある物語。ただこの展開で最初から検事補の葛藤が薄いのは疑問。★4
3-5『愛に飢えた男』
犯した殺人をまったく記憶していない男の殺意を立証できるのか? 物証だけで終わった刑事編を、法廷編で動機を解いてしめくくる。これぞLaw&Orderという王道パターン。弁護側の論理も事件の真相も突飛だが説得力があり聞きごたえあり。★4
3-6『未来への選択』
連続エピ前編。イギリスの恐るべき貧困が、子供をギャング犯罪へと引き込む実態を綿密なプロットで描く。寒々とした光景が続き、観る者の心を冷やす。なにより衝撃は最後1分のパニック描写。恐慌し逃げ惑う者、叫ぶ者、震える者。見事な撮影!★5
3-7『残された者』
デブリン刑事はなぜ殺された? 新刑事ケイシーとブルックスの執念の捜査。警察の体質や検視官の不正といった様々な要素が折り重なって、犯人の動機が明らかになっていくプロセスはまた綿密。繊細な感情表現も素晴らしく、物語に引き込まれる。★5
3-8『免責』
強盗犯に誘拐された男。彼を救うには先に捕まった犯人と司法取引をするしかないのか。限られた時間、絶望的な状況の中でのサスペンスだが、緊迫感は米国版が上か。犯人を守る弁護士のキャラが目立つのだが、彼女の貫くポリシーに説得力がほしい。★4
3-9『過去の重み』
アル中時代のブルックスの誤認逮捕事件、真犯人が14年後の今になって見つかる。感情描写に優れるUKシリーズなのだが、被害者家族と元パートナー両方への贖罪に迫られるブルックスの表現は、どこか物足りない。検察側がどこか他人事なのも不満。★3
3-10『慢心が招いた悲劇』
小包爆弾を作った学生にあった精神病歴。彼の行動が見過ごされたのは、誰の責任か? 学生役も医師役も演技が上品なせいか、真の病状が明らかになったあとの会話の迫力が今一歩。ソーン検事補の母親も、ちょっと巧く絡んでない。★3
3-11『再起』
少年の間に出回る集団レイプビデオ。少女は証言台に立てるのか? 自身もレイプ被害者のアリーシャが担当検事となり、裁判の重苦しい過程を丁寧に描く。犯人や弁護士に加え、強姦罪に寛容な判事の微妙な表情が巧い。それぞれの役者が存在感を示す演技。★5
3-12『長い1日』
普段とは視点を変え、複数の事件を担当する刑事と検事の1日を追いかける。サッカーを見たいブルックス刑事を追い詰める非情な時計の針。さみしい幕切れに苦笑。シナリオはサスペンスも謎解きもほどほどで、やはりぐっと盛り上がる展開が欲しい。★3
3-13『出来心』
法医学研究所員の殺人捜査。ケイシー刑事の情事が話を泥沼に……。いわゆる悪女モノだが、犯人の終盤の証言は男社会・性搾取に対する告発ーになっていてドキリとする。その上で最後、DV訴訟の調査を切り上げる弁護士と過行く時間の描写は巧い。★4
まとめ
総ポイント数
47 / 65
平均
3.62
感想
平均点としては第2シーズンより低くなったが、中盤のクリフハンガー(英国では第3シーズンフィナーレと第4シーズンプレミアにあたる)で展開されたデブリン刑事のエピソードが素晴らしい印象を残し、全体の満足度は高かった。前編のラストシーンはパニック描写としては出色だろう。
その他のエピソードでは、確かに印象深いエピは多くない。11話『再起』も、オリジナルの米国版エピのほうがそのインパクトは高かったように思えるが、そのぶん米国版にない演出……法廷内でも繰り返される男性優位社会の暴力性が、染み出すような厭らしさを伴って描けていた。
新任検事のソーン検事補は初期の冷徹なイメージが次第に変わり、フランクな私生活など、オリジナルのマッコイ検事補を彷彿とさせる面を見せる。法廷では彼のような迫力がまだ見られないのが残念。一方のケイシー刑事も、カーティス刑事のような色男っぷりの片鱗を見せてくれる。