リー・チャイルドの犯罪小説をベースにした“街映画”。物語がアメリカの一都市のなかだけで完結するくらいのコンパクトな映画だけど、当たるとけっこうコストパフォーマンスがいい。これはかなり良いほうだった。
弁護士ドラマとしてよくできてる
アウトローといっても、トム・クルーズは法律無用の暴れん坊じゃない。アウト“ロー”だけに、本作の軸は凶悪な刑事事件をめぐる弁護士と検察・警察の捜査。そこに法のはみ出し者たるジャック・リーパー(トム・クルーズ)が現れ、ヒロインの弁護士、ヘレン・ロディン(ロザムンド・パイク)の調査アシスタントとして活躍するという筋書き。
弁護士ものとして最近思い出すのは、似たようなコンパクトさの『リンカーン弁護士』だけど、アクション・サスペンスである『アウト・ロー』のほうが、弁護士ドラマとしてもよくできていたと思う。ロディンは単なるお飾りでなく、正義に燃える弁護士としてちゃんと行動が描けてたし、彼女とリーパーが次第に暴いていく真の犯罪者と、彼らとの対峙は推理モノとしてもおもしろい。最後のアクションシーンに至る流れも自然だった。
問題は、トム・クルーズだ。
考えてみりゃ超人
流しの調査アシスタント、ジャック・リーパー。彼の特徴を書き出してみるとすごい。
- 軍隊仕込みの体力と瞬発力
- 数字であればコインの発行年数まですべて覚える記憶力
- 予言者レベルの洞察力
- 銃を自在に操りスナイピングも得意
- 軍で法務官を務めた法の知識
- 頭をバットで殴られてもすぐに復活する頑丈さ
- マシンガンの弾がよけて通る運の良さ
- 一目見たらムラムラくる肉体美
これが、当たり前のように映画にでてくる。シリアスで設定もかなりよくできたドラマのなかに、こんなメチャクチャな超人がするりと入り込む。考えてみるとこんなやりかたじたい、映画としてアウトローだ。ところが、これがきちんとサスペンスが成り立って、超人っぷりが気にならない程度にうまーく物語が流れてく。これが本作の最大の見どころかもしれない。
シリーズで観てみたい
犯罪の被害者の見せ方は涙を誘うし、カーアクションは盛り上がる。シリアスな流れのなかにドリフっぽいユーモアを入れるセンスはなかなか。ロディンと対峙する警官のキャラクターが見えづらかったのは残念だったけど、サクッと楽しめるいい映画だった。
『ミッション・インポッシブル』のようなやるき満々の映画より、こういうライトで、ある程度気の抜ける映画のほうが、むしろ第2弾、第3弾とシリーズで観てみたい。撮影時間も短そうだし、トム・クルーズもラクなんじゃなかろうか。他人ごとみたいに言うけど。