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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

マネーモンスター

韓国映画『テロ、ライブ』は、ラジオニュースのキャスターが生放送中に爆弾を仕込まれ、犯人と丁々発止のやりとりをしていくワン・シチュエーションの映画だった。『マネーモンスター』はこれとほぼ同様のシチュエーションなんだけど、ここに金融を絡めるとこんなに面白くなるんだ!

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株取引って世界中の投資家・トレーダーが絡むわけで、テレビの外の世界への広がり、インタラクティビティが、すごくダイナミックに小さなスタジオと影響しあう。このアイディアで、『マネーモンスター』には『テロ、ライブ』の単なる二番煎じでない、スリルと笑い、そしてわけのわからん感動が生まれた。

序盤の大盛り上がりシーンがまさにそれ。株の暴落で全財産を失った爆弾魔の気を静めるには、株価を上げればいい! ということで、アルゴリズムが支配する最もドライなマネーの世界で、「人々の心」に訴えて公開で株価を上げようとするシーンは、ものすごい滑稽でシニカルなんだけど、同時にものすごく感動してしまった。そんな感動している自分がアホに感じられて、それがまた面白い。もちろんその後のオチもすばらしい。状況のコントラストが凄まじいだけに、最初から感動ありきのヒューマン映画よりも、笑いも感動も増幅される。

その後も通常の人質劇を裏切るようなシーンが続々で、悲しいのに大爆笑みたいな感動もある。ほんとうにシチュエーションの作り方がうまくて、最後の謎解きを踏まえたクライマックスが、むしろ平凡に思えてしまうほど。そして映画は、ドライに、とてもドライに終わる。終わってみれば確かに、金融という冷酷な怪物の存在感が感じられる、良い映画だった。怪物は人の意思の集合体だ。

 

翻訳は風間陵平せんせい。金融用語をうまくコンパクトにまとめるのは、ドキュメンタリーのそれに近い。韻を踏んだラップの翻訳もあり、こちらも楽しめました。

 

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食い意地:実家 春の食材

たまには食い意地の記録を。といってもずいぶん前に食べたものだが。

4月2日、祖母の見舞いで、いやもう葬儀だったか、実家に戻った時の食事。

農協直営市場で売っている野菜。

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毎回帰るたびに、田舎の食材は恐ろしいと思う。東京のスーパーで売ってるものは何なんだ。

刺身も当然ものすごくうまい。ちょっとピントがあわなかったけど。

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タラの芽の天ぷら。

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タラの芽は、大井川の西岸、榛原地区では「シビトバラ」と呼ばれ、棺桶に杖替わりに入れるものだったそうで、食用は禁忌されていたそうだ。東岸のこちらは関係ない。

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うまい。

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夜桜の綺麗な日だった。

 

教授のおかしな妄想殺人 - いつものウディ・アレン映画

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ウディ・アレンの映画って、観に行くまではすっごく億劫で映画館で観なくてもいいんじゃないかなと思うんだけど、観終わると、ああ、観てよかったといつも思う。

今回は鬱になった教授と彼に惚れた女子大生の、殺人のお話し。前半はアルコールのにおいが感じられそうなホアキン・フェニックスのアル中演技がすばらしい。前作に続いてヒロインを演じるエマ・ストーンも軽やかで、いかにもアレンが好きそうな女優。

ふたりの独白を交差させ、手練れたペースでコツコツとすすむ物語。醒めた目線で描かれる情熱。適度な緊張感。ラストはちょっとした、観てるほうからしたら滑稽極まりないちょっとしたサスペンスでストンと落として、おしまい。教授に釣られてポジティブに人を殺したくなる、いい映画だった。

 

学生の頃『マンハッタン』で大好きになったウディ・アレン。『マッチ・ポイント』以来、コンスタントに観ているのだけど、もうあんまりテーマとか難しいこと考えなくていいんじゃないかと思ってる。たいてい、人の運命というか、塞翁が馬というか、そんな話だ。

たとえ陰鬱なアンハッピーエンドの映画でも、その状況をコミカル&シニカルに楽しむシチュエーション・コメディ。気楽だし、いつも一定水準で楽しめるし、それでいい気がする。ファンになったからそう思うのだろうけど。