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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

食い意地:新宿駅東口あたり『ゴーゴーカレー』の暗黒近未来カレー

月一で新宿東口あたり(ビックロの裏のごちゃっとした界隈)に用事があって、いつも昼過ぎにいくんだけど、そのたびにゴーゴーカレーに入ってしまう。もうほんと、中毒。すごい店ですよここは。

 

店の中は外から見て不安になるほど暗い。店に入ると正面に券売機があるだけで、その奥は厨房らしい。低賃金で雇われているのだろう外国人スタッフの弱々しい「いらしゃいませー」の声が聞こえてくる。姿は見えない。

券売機の陰気な合成音声を聞いたら、細く急な階段を上り2階席に向かう。

1人客は狭い通路の先にある窓のない部屋の、壁に面したカウンター席に通される。席に座るのはたいてい会社員の男性。よれたスーツやシャツの猫背が並ぶ。通気が悪いので、夏場はカレーの匂いだけでなく人の体臭が残留し、なんだかもわっとしている。

 

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 壁に向かって座り、ベタベタと張り付けられた宣伝を見ながらカレーが出るのを待つ。ここの真骨頂が、壁に据え付けられたモニタで流される映像と音楽だ。

ゴーゴーカレーゴーゴカレーのテーマ音楽にのせて、ゴーゴーカレーがいかにうまいか、米がうまいか、陽気で力強い声のナレーターが、寸劇を交えながら次々と紹介していく。〇〇に出店した、新メニューが出た、努力の結果味が上がった、スタッフはやる気にあふれている。〇〇のチャリティーに貢献した……これが延々と流れていく。*1

 

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やがて、陰気でやるきのなさそうなスタッフが、カレーライスの入った鉄食器を持ってくる。ルーはコメの周りにかけられ、カツの下には申し訳程度に塗ってあるだけなので、いつもコメに対しカレーが足りない。コメはバサバサだ。

 

窓のない部屋の壁に白い向かって、カレーをもそもそと食べる。「ゴーゴーカレーはうまい! みんなやる気に満ち幸せだ!」という映像を見せられ、次第に脳が麻痺してくる。店員も、客も、みな誰とも目を合わさず、ただ、ぼんやりとカレーを食べている。

 

ディストピアだ。正真正銘のディストピアである。これが21世紀だ! SF作家が思い描いた通りの未来世界が、ここにあるじゃないか!!

 

料理とは味のみならず体験であり、情報である。この店にはその後者2点において価値がある。

世の中ままならない貧困や孤独に満ち溢れ、押しつぶされそうになりながらみんな生きてる。ところが、ここまでカリカチュアライズされたディストピアを体験すると、逆に自分の不幸までも相対化され、なにか笑えるものに感じられてしまうわけ。それがこの店の提供する快楽であり、バリューであり、もうほんとやめられない。また行く。

 

 

ゴーゴーペンギン

ゴーゴーペンギン

 

 

*1:最近来たらこういうストレートなコンテンツは少なくなって、よく分からん音楽のPV流したりするようになってた。その合間に寸劇で努力して味が上がり売り上げが倍増したとかやってるんだが。

食い意地:練馬 蕎麦『ふる井』

休日、久々に練馬を散策したので、豊玉の蕎麦『ふる井』で昼から蕎麦飲み。

駅から遠く、自動車で来るようなお店でもなく。小さくとても良質で、近所の人が続々と集まる、たいへん良いお店。

お昼のセットメニューはよいものがそろっているけど、夜メニューも頼める。日本酒も。季節のお料理をおつまみに、お酒をいただく。 

わさび菜の和え物。

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たけのこ焼き。

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日本酒は『伯楽星 純米吟醸 おりがらみ』に、勢いがついてメニュー外の『越乃景虎 にごり生』。前者はフルーティでまろやか、後者はなめらかな舌触りで、柔らかだけど後味にぴりっと残る。おいしい。

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そして天ぷら。すごい盛りだ。季節ものだから、ゼンマイやコチも入ってる。コチは夏の魚だと聞くこともあるけど、春の花の咲き始める頃がおいしいとかなんとか。

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あまりの食いでに、肝心の蕎麦の写真を忘れてしまった。細打ちですっきり。天ぷらも衣が軽く油っこいわけではないので、ちょうどいいバランス。

たらたらと歩いて、徳田の立派な早咲き桜を見て、哲学堂の水道タンクまで足を延ばす。

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以前世田谷の砧から桜上水のあたりを真っすぐ貫いている道を歩いていて、正面にこの配水塔が見えたときは、はっとなった。この道は荒玉水道道路。なるほど繋がっていたわけだ。

休日練馬から中野に向かう道は、車も人もほとんど通らず、空は広く、実に散策向き。

 

北千住『びあマ』のクラフトビール

実はビールはそれほど得意ではないのだけれど、友人に「一人では飲めないビールがある」と言われて、はるばる北千住まで行ってきた。ときわ通りの歓楽街にある『びあマ』。

角打ちというか、いまはワイン屋さんでもある業態だけど、お店と立ち飲みカウンターがセットになっている。ただ、カウンターのほうが路面側に出ているのは珍しい。ガラス張りで解放感があり、昭和的な店の並ぶ歓楽街ではかなり目立っている。

 

店の奥の販売コーナーは凄まじい。千種類以上あるのでは。無論、買ってグラス代を追加すれば店内で飲める。一人で飲めないビールというのは、大瓶のビールも置いているので、これを店内で飲もうとしたらやっぱり二人以上要るのだ。

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店にはクラフトジンなんかも少し置いてある。個人的にはニュージーランドビールがなかったのがくやしい。クラフトものじゃないけど、常温飲み用のビール、久々に飲みたかった(家畜の放牧地に出た時用にそういうのがあるのだ)。

 

で、昼間から何杯か飲んだ。何種類かタップで備えているが、ステンレス樽でなく、木の樽に入っているそうだ。ワインと同じで成分の沈殿があるので、開けたてと最後ではかなり味が違うという。

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これは『シエラネバダ トルピード』。フルーツ感強し。『ブリュードッグ ネオンオーバーロード』が凄く面白かった。マンゴーの香りにハバネロの辛みがやってくる。長続きする辛さで、これはドライフルーツと一緒にチビチビ飲むのが良かった。フードは少ないけれどキッシュもおいしい。いろいろ試せるお店で、よろしいんじゃないでしょうか。