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セルフリッジ 英国百貨店 シーズン3 - 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った、英国ドラマ『セルフリッジ 英国百貨店』(原題: Mr. Selfridge)おおむね140文字エピソードガイド&感想 シーズン3(全10話)。

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あらすじ

第一次大戦終結から間もない1919年、ロンドン。戦時中に進んだ女性の社会真しゆつは復員兵の失業につながり、旧来の男尊女卑的な社会からの脱却は、混乱と痛みを伴うものとなっていた。

ハリー・セルフリッジの妻ローズの死から1年が経ち、セルフリッジ家は久々の明るい話題に沸いていた。ハリーの長女ロザリーが、亡命ロシア貴族、ボロトフ侯爵夫人マリーの子息セルゲイと結婚するのだ。しかし、セルゲイには野望が、そしてマリーには秘密があった。セルフリッジ家に同居することとなったふたりとの生活は、一筋縄ではいきそうになかった。

そんなか、ハリーは女性起業家、ナンシーと出会う。先進気鋭の彼女は、復員兵向けの住宅地造成の計画を立て、ハリーにスポンサーとなるよう依頼する。ハリーはそんな彼女に惹かれていく……。

一方、レディ・メイと離婚したロックスレイ卿が、パリからロンドンに帰還する。過去の遺恨から、セルフリッジ百貨店の株主となることでハリーを陥れようとするロックスレイ。セルフリッジは家族と会社を、ハリーから守れるのか?

 

全話レビュー

3-1

ロシア貴族だよセルフリッジさんのまき。前回の4年後というまさかの設定であっさりローズが退場! ロザリーの結婚から始まる新たな物語のセットアップ編。ロシアの酔いどれババアはレディ・メイに変わる強烈キャラ。ロックスレイ卿の復讐が楽しみ! ★★★

3-2

経営会議だよセルフリッジさんのまき。過剰な事業拡大の軋みは広がり、一方アンリの戦争後遺症も……。不穏さが募るエピだが、セルフリッジの個人的な経営方針に上級社員たちが正面から反対の意思を示すシーンは重い感動を呼び、キャラの成長を感じさせる。★★★★

3-3

セルフリッジさんと復員兵問題のまき。競売対決もさることながら、戦争後遺症に苦しむアンリの描写が胸に刺さる。サブプロットもまさかの展開でメインテーマに統合され、ずっしりとした幕切れ。復員兵の問題も常に女性の視点で捉える、ぶれない脚本に感心。★★★★★

3-4

後始末だよセルフリッジさんのまき。キティを襲った暴漢たちへの捜査は、ヴィクターのパブにも波紋を呼ぶ。復員兵問題が改めて複層的に描かれ、各キャラの物語に繋がり、アンリの物語で締めくくられる。巧い構成。ロマンスも忘れずにきっちり描くのがニクい。★★★★

3-5

副社長だよセルフリッジさんのまき。後半に向けて各キャラにそれぞれ新たな問題がセットされるエピ。各プロットがうまく影響しあっているので散漫な印象は受けず、ばらまかれた不穏の種に後半への期待が膨らむ。おばあ様2人の友情が微笑ましい。★★★

3-6

セルフリッジさんショーウィンドウはだいじょうぶ?のまき。それぞれのキャラのプロットが並行して走るが、今回は相関も少なくテーマが統合される感もない。メインのプロットも少々類型的でオチが読めるが、楽しいことに変わりはなし。安心して観られる。★★★

3-7

株主総会だよセルフリッジさんのまき。またもロックスレイの罠にはまったセルフリッジは大見得を切るが……? 3つのプロットで、つらい裏切りと別れが描かれる。テーマとしてはまとまっているが、全体敵に重すぎハッピーなシーンでも幸福感が得られない。★★★

3-8

それでいいの? セルフリッジさんのまき。グローヴの問題が解決し、セルフリッジは目的を果たしコレアノも状況を好転させる。だが各プロットとも盛り上がりに欠け、最終章直前の状況整理といった感。女性キャラの活躍が見えないのが最大の難点。★★

3-9

お母さまは見た!だよセリフリッジさんのまき。プリンセス・マリーが家政婦探偵ばりの活躍を見せ、それが最終回の悲劇を予感させる。トリックスターだと思われたナンシーがここまで人間的なキャラになるとは。彼女もまた、運命に翻弄される女だったのだ。★★★

3-10

愛を知らないセルフリッジさんのまき。これまで続いてきた4つの愛の物語に結末が。多少詰め込み過ぎだがそれぞれ腹落ちする展開。結局ダメ人間になびいたマーデルの物語は少々納得いかないが。そしてラストシーン! レンズフレアまで入った画面に爆笑。★★★★

まとめ

総ポイント数

34/50

平均

3.4

感想

ハリーの妻ローズの死は歴史的な事実なので仕方ないとしても、抜群の存在感を持つレディ・メイが抜けた『セルフリッジ』、どう考えてもパワーダウンだと思っていたが、それでも作品の持つ複雑なケミストリーは活きていた。これまでのキャラに新キャラを加え、要所々々で彼ら彼女らの人生が交差する。

とはいえ亡命ロシア貴族プリンセス・マリーは、状況をひっかきまわし、その図太さが存在感を発揮するものの、レディ・メイにあった力強さ、上品さが感じられないのは残念。セルフリッジ家のロイスおばあさまとの絡みは面白かったのだけれど描写が足りず、もっと見たかった。

第一次世界大戦後の混乱という設定から、複数のキャラの内面的な物語を発展させていく手法はやはり見事。時代的に『ダウントン・アビー』と重なるこのシリーズだが、ダウントンよりも歴史劇という側面が強く、大きな歴史のうねりを感じ取ることができる。そこも評価のポイントだと思う。