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『ALMOST HUMAN / オールモスト・ヒューマン』海外ドラマ全話レビュー

Twitter使った『ALMOST HUMAN / オールモスト・ヒューマン』おおよそ140文字全話エピソード・ガイド&感想(全13話)。

なお、わたくし一応はSFファンであるため、ドラマ内のSF設定については少々斜に構えたところもありますが、ご容赦を。

あらすじ

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西暦2048年。テクノロジーの急速な発展は新たな社会的脅威を生みだし、犯罪発件数は増加の一途をたどっていた。続発するテクノロジー犯罪に対抗するため、警察機構は戦闘型アンドロイドを導入、人間の警官にパートナーとしてつけることを義務化した。

2年前、刑事ジョン・ケネックスは、犯罪組織インシンジケートとの戦闘で、アンドロイドの判断により同僚を見殺しにされ、自らも片足を失った。17か月の昏睡ののち職場復帰した彼は、標準型のアンドロイドとの連携を拒否、ひょんなことから廃棄寸前のアンドロイド DRN-0167 とパートナーを組むことなる。

自らをドリアンと名乗るDRN-0167は、“人工魂”とも呼ぶべきプログラムを搭載し、感情を持っていた……。

全話レビュー

第1話『失われた記憶』

ブレードランナーオマージュな舞台作りに90年代のテレビドラマみたいな懐かしさを覚える。導入編とはいえシナリオは少々詰め込み過ぎ。相棒アンドロイドが人間的な自我を持つのがキモなんだが、その描写が足りない。設定紹介に追われて終わった感じ。★★★

第2話『禁じられた衣』

セックスボットの買春組織を追えの巻。第1話より展開も会話もずいぶんこなれてる。刑事ドラマの形式にきちんと乗ってるからか。昭和時代の漫画みたいなベーシックなSFネタ&社会描写だが、それがいい。車のナンバーがバーコードだったりね。★★★

第3話『人質』

ビル占拠テロリストを倒せの巻。設定や見せ方にツッコミどころも多いが、アクション&バディトークのノリが良くて最後まで面白かった! コミュニケーションというテーマがまたアンドロイドの持つ「人工魂」というシリーズテーマにリンクするのもよし。★★★★

第4話『潜入捜査』

麻薬組織に殺された警官の汚職が疑われ、ドロドロの心理戦となるかと思いきや、キャラを活かしたアクション劇に。それもかなりバイオレンス! 傷口に指突っ込み拷問するロボット警官なんて初めて見た。逆に人間とアンドロイドの差異が出てないとも。★★★

第5話『暗殺』

クローン犯罪者を追えの巻。近未来の法廷、不妊治療とクローニング、ホログラム等々今回も盛り沢山。ただクローンによる犯罪組織という設定は、アイデンティティの問題としてアンドロイドとも通底するテーマとなりえたのに、いまいち踏み込みが甘かった。★★★

第6話『命の時間』

闇取引の人工心臓の作動は“課金制”だった。毎月カネを振り込まねば命を止められる貧しい人々。その犯罪を止めることもまた、彼らを殺すことを意味する。ここにきて非常にSF性・文学性の高いテーマが出た。それだけに脚本が焦点を絞り切れてないのは残念。隔靴掻痒の感。★★★★

第7話『公開処刑

首輪型時限爆弾を使った殺人のネット中継。この手の設定は現代が舞台の犯罪劇でもよくあり、もはやSFとは言えない。ドリアンのエネルギー不足も劇を盛り上げるためのギミックにしかなっておらず、キャラクター頼みの平凡なサスペンスといった感。★★

第8話『魔法の弾丸』

マイクロ誘導弾から目撃者を守れのまき。いつにもましてシナリオ展開が低調。テーマは“記憶”なのだろうが、断片的に表現されるだけ。あまりにちぐはぐなセリフの掛け合いと繋がらない展開に、ディスコミュニケーションがテーマかと思った。★★

第9話『放たれた兵器』

ドリアンの姉妹モデルにあたるアンドロイドと、彼らの生みの親の博士が登場。自分と同じ感情を持つ機械の暴走を前にしたドリアンの葛藤など、相変わらず描き切れてない部分は多いが、アンドロイド同士の格闘シーンは細かい事抜きに燃える! ★★★

  第10話『クローム

クローン技術で作られた優勢人類“クローム”と、通常人“ナチュラル”の格差による諍い。珍しくアクションのない推理ものだが、中途半端にヒューマンな演出は単に説明不足で退屈な劇になっている。サブプロットとの組み合わせも悪い。★★

第11話『殺人セキュリティ』

スマートハウスに殺される住人。家をハッキングしたのは誰だの巻。前回ぐらいからぐっと演出が落ちつき推理ドラマ的になった感があるが、犯人はありきたりでオチは退屈。序盤の家付きのホロ執事の存在感は吹き替えも含め上出来だったのに。★★★

第12話『偽りの器』

危険なナノマシン療法で美男美女クローンの顔を奪い整形手術を繰り返す男。このSF設定が露骨に物語の都合で作った無理のあるものでげんなり。ところがラスト、SFというより説話的な真相に虚を突かれ、思わずほろりとなってしまった。★★★★

第13話『真実の行方』

遺体に藁を仕込む猟奇事件の模倣犯罪を追う。3Dプリンターによる遺体複製は面白いが、良くも悪くもない引っかかりに乏しいエピ。アンドロイドが“泣く”表現、シリーズが続いていたらもっと魅せられたろうに、ここで力尽きた、という感じ。★★★

シリーズまとめ

総ポイント数

39 / 65

平均

3.00

感想

実に惜しい、もったいないシリーズだった。

本作は21世紀らしいアクチュアルなSF設定を詰め込み、アンドロイドの主人公とともに「人間とは何か」というSFの根源的な問いかけにも答えていく、意欲的なシリーズの骨格を持っていた。しかしこの13話は、よく言えば手探りのチャレンジ、悪く言えばネタを消化しきれていない、底の浅いエピソードの連続だった。

あと少しで「面白さの方程式」が番組内で成り立って、視聴者を引き込んで行けたのかもしれない。しかし、その前にシリーズは力尽きてしまった。残念だ。

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