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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

真夏の東京観光:高尾山は悪くない選択だった

灼熱地獄と化した2023年日本の夏。7月17日の海の記念日に高尾山に登ってきたが、これが意外と良かった。自分でも驚いた。ちなみにこの日は東京の最高気温36度だった。

十丁目茶屋のあたりから、南の横浜方面を望む

高尾山中腹からの光景

 

意外と涼しい

毎日のように気温が35度を超え「命にかかわる」と報道されている過酷な状況で、体を動かすアクティビティをやるなんてどうなんだという至極まっとうな疑問が自分にもあった。それに高尾山だ。山と言っても標高600m。そう涼しくもなるまい。そう思ってかなり対策をして訪れたものの、結論、逆の意味で山をなめてた。涼しい。

 

今回事情によりシリアスなハイキングは諦めていたので、朝8時のケーブルカー(始発)に乗って中腹まで行ったのだけれど、いちばん暑いと思ったのは登山前のケーブルカー駅の広場で、数百メートル登っただけで少し気温が下がるのが体感できる。メインの登山道(というか神社の参道)は当然ながら、ほぼ木陰。確かに暑いが、都内で感じるような危険な気温ではない。脇道のハイキングルートに入ってしまえばなおさらだ。

 

都心にはない風が吹いているのもよかった。直射日光の当たる頂上広場も、風のおかげでやり過ごせる。中腹の茶屋では窓辺に座って、よい風にあたりながら団子を食べた。夏に吹く心地よい風なんて、何年ぶりの感覚だろう!

 

とはいえちろんリスクはあるので、水分は常に補給していた。カラのペットボトル3本をリュックに入れて電車に乗ることになった。ここまで制御された高尾山の環境なのだから、せめてペットボトルぐらい捨てるところが欲しい(いや探せばあるのだろうが)。

 

山門にかけられた数個の風鈴から軽やかな音が聞こえる

薬王院の山門にかけられた風鈴

 

空いている

春や秋の観光シーズンに比べれば、夏の高尾山の人の少なさは驚きだ。ピークタイムよりは早めに出たとはいえ、いつも渋滞のできる薬王院の階段もガラガラ。ケーブルカーもリフトも茶屋の軽食も、どれも並ぶことが当たり前だと思っていたのに、難なく使えた。

 

もちろん無人というわけではなく、駅に着く電車からはところてんのように絶えず人が出てくるのだが、山が吸収できる程度の人の数だ。わざわざ海の日に山に行く馬鹿が少ないのか、やはりこの熱波に恐れをなしてキャンセルしたのか、熱波のなか山に行く選択をするという総合的に頭のおかしい人間は少なかったようだ。人口面で快適な高尾山というのは意外とレアだ。

 

登山口の蕎麦屋も、いつもならミシュランの星も地に落ちたものだと毒づくものだが、空いていると心の余裕ができるのか、わりと寛容に楽しめる。天ぷらもちゃんと揚がってるし、日本酒のあてに養殖アユも乙なものだ。いいじゃないの。

 

アユの塩焼き。香りづけにオリーブオイルが添えてある

『むぎとろ たつや』の川魚(鮎)

 

前泊のタカオネ

今回は諸事情があって現地にできたアクティビティツーリズム用のホテル「タカオネ」に前泊することとなった。泊まってしまえば、駅前の温泉施設と合わせて、ちょっとした旅行気分になる。

 

高尾山はアウトドアのアの字も知らない能天気も受け入れてくれる山登り入門レベルマイナス1みたいな観光地なんだが、このホテルもそうだ。宿泊すると、完全に制御された環境下で焚火の火起こしをして、自分で焼きマシュマロを作る体験ができる。部屋自体はテレビなしのワンルームマンションみたいな感じだが、清潔で過ごしやすい。

 

もちろん、ホテルの意図としてはここを拠点にシリアスなハイキングを楽しんでくれということなのだろうが、シリアスなハイカーならこんな整った環境はそもそも要らないだろう。我々はアウトドアごっこを求めて高尾に来ている。そういう人間には最適な宿泊施設だ。


なお、宿泊して初めて知る夕方~夜の高尾山は、変な意味で面白かった。なんにもないのだ。駅のコンビニからして夕方閉店だ。また、東西を山で囲まれているので綺麗な夕焼けや日の出を楽しめるわけでもない。なるほどここは日帰り観光地だなと思った。

 

ホテル『タカオネ』の焚火体験

 

東京の西側に住んでいることもあり、なんだかんだで年に1度は高尾山に行っているのだが、真夏の高尾山というのは意外なほどよい体験だった。

 

ちなみに登山口からぜんぶ足で登らないのであれば、行きはケーブルカーで中腹まで行って、そこから頂上を目指す。帰りに吊り橋のある4号路を通ってちょっとした山登り気分を味わいながらまた中腹に戻り、今度はリフトで降りるのが好適だ。高尾山のリフトからの眺望は良い。多摩丘陵の緑の中に白く並ぶ人の住居群は、まるでスペースコロニーの内部のようだ。いや、発想が逆なのだが。

 

緑の丘の中に点在する白いマンション。その向こうには青い地平線と都心のビル群。

下りのリフトから多摩丘陵エリア、そして新宿方面を望む