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Gaao Line's Web Journal: Writing about US/UK TVs, cinemas, and foods I love.

ジャンル:SF

なぜ彼らはこうも明るいのか - スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド 1-1話

彼らは明るい。『スター・トレック:ストレンンジ・ニュー・ワールド』のプレミアエピソードを観ての第一印象だ。新生エンタープライズの乗組員たち――設定的には、初代『宇宙大作戦』のエンタープライズの前任クルー――は、みな明るく、笑顔を絶やさない。も…

『ゴジラ -1.0』 - 最後の国産大衆映画 その課題

観終わって最初に思い浮かんだのは、意外とコンパクトに収まったな、という妙な腹落ち感だった。『ゴジラ -1.0』はそのタイトルが示唆するように、戦後の荒野を背景として人々を更に徹底的に叩きのめす、深く昏い怪獣映画になるのではなかろうかと、ほんの少…

アニメ版『PLUTO』 - この映像化のどこに迷ったのか

『PLUTO』の放送がネットフリックスで始まるというニュースを見て、おっと思ったのが、1話約1時間、全8話という構成だった。ケーブル/配信系の海外ドラマでおなじみのミニシリーズ(リミテッドシリーズ)フォーマットじゃん。 思い返してみると、浦沢直樹作…

怪獣プロレスに初めて理屈がついた! - ウルトラマンブレイザー

固定資産税の時期が過ぎると、怪獣税のシーズンだ。ことしもウルトラマンの新シリーズが始まる。いちど怪獣特撮を好きになってしまった以上、どんなにチープだろうと、どんなに過去作品の再利用が甚だしかろうと、観て買ってカネを落とさねばならんのだ。 し…

ウディ・アレン風ロマコメとしての『ガンダム:閃光のハサウェイ』

富野由悠季の90年代の小説を映像化した機動戦士ガンダム:閃光のハサウェイは、ウディ・アレンのロマンティック・コメディを思い出させる恋愛映画だった。男目線での”女”を通じたニュータイプの再解釈と、ロボットアニメで再現される、こっぱずかしいあの感…

『ペリフェラル』第1話 - 我々はいつまでクロエ・モレッツのアレな姿を見続けるのか

クロエ・グレース・モレッツ主演のAmazon製作TVシリーズ『ペリフェラル』で、彼女はどんな演技を求められたのか? 彼女の子役としてのキャリアを振り返りつつ、彼女の立ち位置を考える。

続けることってすごい - 劇場版ガンダム Gのレコンギスタ IV

半世紀も前から、富野由悠季はロボットアニメを作り続けてきている。10年と間を置かず、何かしら自分の作品を創造し、演出を続けている。手を変え品を変え、所詮アニメ、所詮ロボットと自嘲しながらも、その時々の思想を込めて、その時々でできる技法を盛り…

Apple TV+の『ファウンデーション』は結構凄いことやってるのよという話。

アップル嫌いの自分が我を殺してでもApple TV+に契約せざるを得なかったのはマイケル・ムーアのドラマ『フォー・オール・マンカインド』のおかげだけれど、それを上回るネームバリューで始まったのが、21年秋の『ファウンデーション』だった。言わずと知れた…

我々はロボコップみたいな時代を生きている

ロボコップの劇中劇、というか劇中ニュース番組である『メディアブレイク』が、いまも大好きだ。 それは虚無と皮肉と俗悪な犬儒で彩られたロボコップの、煮凝りのような報道パロディだった。レーザー衛星で誤射される元大統領とかアマゾンの原発事故とか、当…

ゴジラSPは傑作だったか、或いはあと5分尺があればという話。

いや傑作だったと思いたいのよ。しかし、しかし! あの最終回である。あれを、作品としてどう消化すべきか。なんというか、『Gのレコンギスタ』のTVシリーズ最終回に似た隔靴掻痒の感がある。あと5分でも、あの状況を腑に落とすための台詞に充てる尺があれば…

『逆襲のシャア』はクェス・パラヤの物語だ。

4月のあたまの休日。昼から銀座で外せない用事があったので、ちょっと無理して銀座ピカデリーで『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(ドルビーシネマ版)』を観てきた。久々の銀座はまるで別の街だった。地下街はリノベーションが完了し、マリオン周辺も再開発…

『テネット』 - 2時間半で英雄譚を完成するには、という話

久々に入った映画館で「観劇後の感想がトリビアや謎解きだらけになるのなら、それは物語映画としては失敗じゃないかなあ」なんて不遜なことを考えながら『テネット』を観ていたのだけど、ラスト、ロバート・パティンソンが語るシーンで、隣の席からすすり泣…

フォー・オール・マンカインド シーズン1: 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『フォー・オール・マンカインド』シーズン1、おおよそ140文字全話エピソード・ガイド&感想(全10話)。 あらすじ 1969年。すべてが変わった。ソビエト連邦が人類初の月面有人探査を果たし、NASAとアメリカ合衆国の宇宙開発は更なる開発と競…

もしもスター・ウォーズ 最終三部作をゼータガンダム時代の富野由悠季が作ったら?

新型ウイルスのパンデミック対応で、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のレンタル配信が国内でも早々と始まった。たいへん苦労したのだろうと思しき脚本のツボを理解しようと、自分で梗概を書きつつ観ていたのだけれど(趣味なんです、梗概書…

初代ガンダムにおける「戦争」は何の比喩だったのかという思いつきのひとつ

端的にいうと、あのテレビシリーズで描かれた戦場には、富野由悠季という作家の経験したアニメの「仕事」が、そのまま落とし込まれているように思えてならない。 いちばんさいしょの『機動戦士ガンダム』(1979年)は、ロボットアニメという枠で人間同士の戦…

スター・トレック:ディスカバリー - 世界の全肯定が生んだ新しい物語

2017年イチ推しの作品と訊かれれば、『スター・トレック ディスカバリー』を上げるしかない。それは私が長年のスタートレックファンだからで、とても客観的な評価とは言えないのだけれど、このシリーズが表現して見せた世界、宇宙には、心底感動した。ものす…

映画『ローガン』:殺しすぎではという話。

2000年から続いたX-メンシリーズ*1。その事実上の締めくくりとなる作品が、まさかの外伝だと思ってたこの『ローガン』。とにかく泣けるわけだ。あらゆるシチュエーションが。 あらすじ 時に2024年。21世紀初頭のミュータントの発生はすでに過去のものとなり…

ウエストワールド シーズン1 - 観ていた景色が崩壊するアンドロイド・サスペンス

Huluで配信中の『ウエストワールド』は、1983年に公開されたマイケル・クライトンの同名映画を翻案した作品。いまの時代、人工知能テーマなんてよっぽど巧く描かないと白けるだろうと思うんだけど、本作はサスペンスとしての仕上がりが凄まじくて目が離せな…

映画『メッセージ』 - 我々自身、何をどう理解したのかというはなし。

テッド・チャンの小説『あなたの人生の物語』を基に、異星人とのコンタクトとコミュニケーションをこの上なく真摯に描いた『メッセージ』。これはある意味、スルメのような映画だ。見どころは物語のクライマックスで訪れるSF的な衝撃だけじゃない。むしろそ…

ゴースト・イン・ザ・シェル - 必要だったのは美術でなく情報という話

『攻殻機動隊』の映画版。カットカットではすごく「らしい」絵が見られるのに、全体を通して、何でこんなぼんやりとした印象なんだろう。思い至ったのは、美術のディレクションだ。 優秀なアーティストによって過剰なまでに装飾された近未来都市やサイバース…

『ガンダム Gのレコンギスタ』 人と人とを引き寄せるビーム

こちらの記事を読んで、『Gのレコンギスタ』の思い出がまた色々とよみがえってきた。 nextsociety.blog102.fc2.com 富野監督は、世界を表現するあまりドラマが描けていなかったとおっしゃるけれど、その世界に入り込んで観るものにとっては、十分なドラマだ…

新スタートレック シーズン6 : 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『新スタートレック(スタートレック:ザ・ネクスト・ジェネレーション)』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第6シーズン。 あらすじ 地球での奇妙な任務を終え、深宇宙探査を続けるエンタープライズ号。400年間理論だけの存在だと思…

極上の政治コメディとしての『シン・ゴジラ』

シン・ゴジラは、怪獣を生々しいほどに恐ろしい存在として描いている。だからこそ、その一方で圧倒的にポジティブなキャラ、そして笑いを作る必要があったんだと思う。実は脚本はエンタメの教科書的だし、その笑いは、物語の大きな葛藤をあぶりだすものにな…

X-ファイル 全208話 エピソードガイド&レビュー まとめ

SFホラードラマ『X-ファイル (X-Files)』の全エピソード 9シーズン202話+リバイバルシリーズ(シーズン10)を、Twitterを使ってすべてレビュー(あらすじ&感想)するプロジェクト。レビューを参考に好みのエピソードを見つけて、ぜひご覧ください。 全シー…

X-ファイル シーズン10 - 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『X-ファイル(X-Files)』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第10シーズン。 あらすじ Xファイル課の捜査が終了し、モルダーとスカリーがFBIを去ってから10年以上が経った。医師を続けていたスカリー、そして隠遁生活中のモルダーは、…

X-ファイル シーズン8 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『X-ファイル(X-files)』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第8シーズン。 あらすじ UFOに誘拐され行方不明となったモルダー。カーシュ長官代理はある思惑からモルダーの捜索を進めるため、ドゲット捜査官を送り込む。一方、スキナー…

帰ってきたヒトラー: 面白いアイディアなのに、なんだか退屈に感じてしまう映画

たいへん面白いテーマで、小説の翻訳が出た時は読もう読もうと思っていたものの、結局スルーしてしまった。ごめんなさい。で、めでたく映画になったんで観たわけだけど、なんとも感想が言いづらい映画だなあ。 映画の半分は、実際にドイツじゅうでヒトラーの…

X-ファイル シーズン7 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『X-ファイル』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第7シーズン。 あらすじ 異星人の存在は人類の歴史と信仰にも関わってきたのか? 自らの発見に驚きつつ、探求心を抑えられないスカリー。一方精神崩壊の危機に見舞われたモルダーは、…

X-ファイル シーズン6 海外ドラマ全話レビュー

Twitterを使った『X-ファイル』おおよそ140文字エピソードガイド&感想、第6シーズン。 あらすじ 南極で巨大なUFOの内部にしたモルダー&スカリー。しかしその報告はFBI上層部に受け入れられるはずもなかった。X-ファイルから完全に切り離され、閑職に回され…

キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー - 救いのない葛藤の映画

ちょっと感情的な話だけど、この映画をみてほんとうに、スーパーヒーローものが厭になってしまった。映画の出来がどうこうじゃなくて、映画の示す価値観に、息が詰まってしまったから。そんな自分が辛い。 正義の戦いのなかで数々の副次的被害を出してきたス…