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Law & Order ベスト3エピソード集 - シーズン11~15

全20シーズン・456話あるLaw&Order。どこから観ていいかわからないかたのために、各シーズンベスト3を独断で選びました。今回はシーズン11~15の計120話から、15話を選んでいます。

9.11同時多発テロが起こり、社会のありかたが少し変わり始めたこの時代。ベストエピソードにもテロの余波を描くものが増えています。ベスト選外のエピも、虚偽報道、年金不正、受験地獄などなど、バラエティ豊か。どれも楽しめる社会問題ばかり! Let's watch Law & Order!

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ロー&オーダー 第3クォーター(2001 - 2005) ベスト15

シーズン11 - ベスト3

11-12『線引き』★★★★★

 少年犯罪と死刑制度がテーマ。死刑を求刑する立場にある検事たちの葛藤が再び濃密に描かれる。検事局内の会議は熱く、その結果は重く、そしてどこか虚しい。そんな空気感の感じられるエピ。

11-21『兄そして弟や友』★★★★★

クラシックな名作。真実の解明を阻む容疑者とその関係者たち。警察・検察の目を通して、彼らの愛・友情・憎しみが折り重なるように描かれる。事件の社会性云々ではなく、ひとつの物語としてとても上質だった。

11-24『保護された不正』★★★★★

ブッシュVSゴアの大統領選などでも注目を集めた、票の数えなおし。これをなんと殺人事件と絡めて料理してしまう。一見んなバカなという設定だけど、観てると違和感なく物語になっているどころかぐいぐい引っ張られていく。アクロバティックシナリオの極致。

そのほか

22話に★5点をつけている。この22話は12話とテーマが似ていて、甲乙つけがたい。また10話は動物の「生存権」をめぐる裁判で、観ているうちにそのトンデモ主張が合理的に思えてしまう、裁判ドラマの妙味が味わえる。

シーズン12 ‐ ベスト3

12-5『執着がもたらした悲劇』★★★★

1件のアパートをめぐるミステリー。物珍しいシチュエーションや重い社会問題を扱う話ではないが、推理ものとしての出来は出色。容疑者・証人との会話を重ねに重ね、次々と新事実を見つけ、アリバイを崩し、きちんと真犯人と犯行の動機に行き着く。王道の佳作。

12-10『憎悪の報い』★★★★★

シリーズには何度も敵として登場する名物弁護士的なキャラがいて、今回のアーチャー弁護士はその代表。突飛な施術では勝つためには手段を選ばない彼が今回繰り出す主張は「差別は精神疾患」。憎悪犯罪という最悪の行いが、まさかの無罪になるかもというサスペンスに加え、何が差別・憎悪を最悪たらしめるのかが、逆にクリアに見えてくる。

12-24『愛国者』★★★★★

「疑わしきは罰せず」の原則が生まれたのは、我々人間が歩んできた血塗られた道への反省からだ。アメリカ史においては、戦時中の日系人強制収容もその代表例とされる。テロの嵐に見舞われた2001年、人はその歴史を忘れ、再び正当な自衛の名のもとに、単に疑わしいというだけで人を投獄しようとする。守るべき倫理とは何か、その論証に聞き入る一本。

そのほか

2話、7話、9話に★5点をつけている。人情ものやコールドケースものなど、バラエティは豊か。

シーズン13 ‐ ベスト3

 13-7『弁護士狩り』★★★★★(傑作!)

差別など人権侵害を犯した犯罪者を、人権派の弁護士が弁護するという構図は本シリーズ以外でも多々見られるが、今回はその形式の極北。何度も登場したメルニック弁護士が、信念を貫き通し、罠に嵌っていく。往々にして胡散臭さく見られがちな“人権派”の本当の意味とは、そして本当の悪とはなにか。衝撃の展開が心に突き刺さる。

13-12『神の名のもとに』★★★★★

宗教と対立するエピは傑作が多いが、このエピでは、聖職者を相手にしたマッコイ検察官の激しい議論から、彼の神を騙る相手への怒りがひしひしと感じられる。犯罪の有無を詰将棋のように追い詰めていく議論は、同時に、神とは何かを突き詰めていく議論でもある。

 13-17『天才作家』★★★★★

リアルな舞台設定にハードボイルドな作風が特徴のLaw&Orderだけど、このエピは容疑者・参考人が“文学者”で、作劇も異色。設定を借りて役者たちが楽しそうに劇中で文学対話を繰り広げる。いつもとは違う視点で、殺人とは、死とはという哲学論議が楽しめる一篇。

そのほか

3話に★5点をつけている。このエピは容疑者のロックスターと事件をかき乱す引退警官、両者の老境故の焦りという内面的なテーマがうまく噛み合った佳作。また、6話は「こんなオチがLaw&Orderで!」と口あんぐりなびっくり推理ストーリー。

 

シーズン14 ‐ ベスト3

14-10『奪い合い』★★★★★

必要悪的に扱われる下層労働者としての不法移民。その問題を、別のある社会問題に絡めることで鮮烈に描き切る。市民の自由と権利を勝ち取るために、その障害となる事象を市民ではない不法移民に押し付ける。それが純粋に悪であると、言いきれるだろうか? 革新派の検事補セリーナが、男性の上司たちを前に開陳する「女性を受胎の義務から解放することで、真の意味で女性が女性らしく生きられる」という説。それを単に奇説と言えるだろうか?

14-13『ソフィーにはママが二人』★★★★★(傑作!) 

同性婚と法がテーマ。同性婚が法制化されていないが故に、理論的には事件も起こりえないという、まさに法のアクロバット。それが事件の当事者の感情と密接に結びつき、濃密で感情的な演技が楽しめる。ラストシーンでもう一度はっとさせられる。同性婚だろうが異性婚だろうが、「片方が稼ぎ、片方が育てる」という役割分担の強要が引き起こす問題は同じなのだ。

14-14『市庁舎にて』★★★★★

公共料金の値上げを枕に語られるのは、テロ対策の為に合法化された連邦の密室裁判制度。それが殺人を闇に落とし込み、正義を曇らせる。“公共”のために罪なきに人間が苦しむなか、倫理に苛み、それでも弁論を張るマッコイ検事補の言葉に、苦い感動が広がる。

そのほか

12話、21話、22話に★5点をつけている。22話は日本絡みのエピソード。日本の文化描写は十分許容範囲だと思うんだけど、この問題は目くじら立て始めると切りがなく、また「日本人はこんなにヘンじゃない!」という無意識の自己弁護が働くことも多いので、なかなか客観的には判断できないかもしれない。それ以外では8話、15話など、テロの余波とイラク戦争の影を扱ったエピソードも目立つ。

シーズン15 ‐ ベスト3

15-1『鮮血の十字架』★★★★★

新刑事が登場し、猟奇的な殺人とテロリズムが絡む捜査パートは、アクションも多く見応えたっぷり。そして裁判編も「戦争の正当性」を賭けた熱い戦い。容疑者が語る自己弁護は古今東西様々なテロリスト(見方を変えればパルチザン)が取ってきたもので、そこには一定な説得力がある。それに挑戦する検察の弁論に聴き入る。

15-7『知事の恋人』★★★★★(傑作!)

なんとNY州の隣のコネチカット州知事すら裁判のターゲットにしてしまうこの番組、しかしその設定にはテーマに対する必然性があった。州際的な内容にすることで、自治体ごとでわかれる同性婚の法解釈とその意義を問う。法のテクニカルな問題で非常に面白い論戦になるのはもちろんのこと、その中に現れる法に愛を否定されてきた同性愛者の叫びが、心を激しく揺さぶる。

15-14『第三の男』★★★★★

その名の通り、傑作映画をオマージュとしたエピソード。自分の行為が誰かを殺すという事実に無関心な人々の内なる悪を追及する。偽薬問題という多数の人々の命がかかる問題を題材に、緊迫した捜査編、様々な法理論が飛び交う裁判編、そしてマッコイ検事補の怒涛の尋問と、濃密な面白さ。

そのほか

2話、5話、17話に★5点をつけている。5話のベテラン黒人俳優の演技は鬼気迫るものがある。また、4話の精神薬処方の問題を描いたエピも、患者役の俳優が「自分が自分でなくなる恐怖」をよく表現していた。また22話は競馬と年金詐欺をかけたテーマが珍しい。

 

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