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Law&Order シーズン13 全話レビュー

TwitterでのLaw&Order全話レビュー、シーズン13の全話紹介と感想。ルーウィン検事は選挙に勝てなかったようで、保守派のアーサー・ブランチが新検事として着任。リベラルよりの検事補たちとのやりとりが見もの。

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エピソード・レビュー

13-1『隠れみの』

前シーズン最終話と対をなすように、今度はイスラムに傾倒し宗教を盾に殺人を起こす米国少年の裁判。若者はなぜテロに走るのか。最後に語られるその理由はあまりに情けないものだが、それがまた真実だと思える説得力がある。保守派のブランチ検事新登場。★★★★

13‐2『永遠の16歳』

邦題ネタバレシリーズ。まさにビックリな展開だが、他の番組でも似た話があったような……。モデルとなる事件があったのか。答弁に怯むマッコイの姿も楽しいし、女優の顔が(演技だけでなくライティング等も)終盤突如変わって見えるのも凄い。 ★★★★

13‐3『ロックバンドの死』

見捨てられたバンドメンバーの栄誉への渇望が復讐心を生み、その犯罪を暴く警察と検察。犯罪捜査の著述家として栄誉を得た元刑事の違法な証拠さがしが捜査を混乱させるが、ふたりの姿はどこか重なる。一貫したテーマが、心に苦い何かを残す。★★★★★

13-4『危うい判断』

これまでにない保守・厳罰派のブランチ地方検事のキャラクターがいよいよ表に出る。極刑を法廷戦術に使う問題点があぶりだされるのだが、弁護側に一癖ありそうなのに何もなかったり、取ってつけたようなオチがついたり、残念な部分が目立つ。★★★

13-5『指輪は語る』

9.11によって散り散りになった多くの遺留品。誰もが味わった悲劇は、ひとりの男のゆがんだ復讐でおぞましい事件と化す。全編を通じた推理プロットが9.11遺族の悲しみを丁寧になぞる。ゆえに指輪の秘密を知ったときの嫌悪感は真に迫る。★★★★

13‐6『命を懸けた復讐』

これはひどい!(褒め言葉)。借金、不倫に探偵、殺し屋、元警官。最後まで先の読めない込み入った推理ドラマだが、まさかLaw&Orderでこういう構成のエピソードが出てくるとは思わなかった。すごい不意打ちでマッコイと同様茫然とした。★★★★

13-7『弁護士狩り』

人権派メルニック弁護士登場。今回彼女が護るのは、弁護士を米国の敵として殺す極右団体の結社と表現の自由。清廉な倫理を貫くが故に罠に落ちる弁護士。混沌とする社会情勢が、法のために戦う者たちに重い影を落とす。法と正義の限界を見据えるエピ。 ★★★★★

13-8『容疑者は大リーガー』

毎シーズン恒例スポーツ犯罪編、今回はプロ野球の薬物汚染を扱う。麻薬であれ飲酒であれ、中毒者とは単なる“被害者”でいいのか。その本質に見事に切り込んだ最終弁論は腹に落ちる。ゲイ差別問題にも踏み込んだがいまいち迫真性に欠けた。★★★

13-9『自由を求めて』

中国領事の家の前で見つかった遺体は法輪功の学習者だった。中国政府の宗教弾圧として語られる法輪功だが、番組は実名で、法輪功側の情報操作やカルトな側面も描く。政府も宗教も、弱者から自由を奪うという点では同義なのだという強いメッセージ。★★★★

13-10『母の日』

危険行為に走る精神病患者を殺すことは正当防衛にあたるのか? 息子への絶望にかられた母親を救うために姪の弁護士が次々と繰り出す法廷戦術で、裁判編は見応えたっぷり。検察という少し突き放した視点だからこそ、子を思う母の情がうまく伝わってきた。★★★★

13-11『殺しの名目』

あっさりと終った捜査編のあとに登場するのは、どこかで見たようなユダヤ系コメディアン風の弁護士。今までも理論のすり替え系の事件は多々あったけれどこれはその極北で、翻弄される検察側のリアクションが楽しい。最終弁論は迫力不足だが。★★★★

13-12『神の名のもとに』

人を殺したが罪は犯していないと語る聖職者の信念を突き崩そうとするマッコイの凄まじい弁論。前半は麻薬犯罪に娘を奪われたブリスコーの、後半はかつて身近な人々を無慈悲に奪われていったマッコイの(写真が泣ける)、信念がよく伝わった。★★★★★

13-13『証人とその妻』

マフィアものと思ったら意外な展開、裁判の争点は、陰謀論が弁護に使えるか? 政府の陰謀を漠然と信じている人が多いのも事実で、陪審制では脅威だ。最後はウソを信じる者が哀れな末路を辿りホッとするが、何かモヤモヤとした怖さが残った。★★★★

13-14『操りのテクニック』

シーズン1度のファムファタールもの。今回の女性と男性の関係はすこし特殊な要因があるが、本質的には男の哀れな虚栄心に依るものだというのが最後に喝破される。それはある意味快感かもしれない。★★★

13-15『最高の母親』

立身出世の女性社長がその強烈なエゴゆえに犯した不義と殺人。今回は遂に更年期障害までが、裁判の心神喪失弁護に使われる。精神科医スコダ先生に加え、久々オリベッティ先生まで登場し、ファンには嬉しい裁判模様。★★★★

13‐16『灰色の真相』

13年目に入ったシリーズが、よりスマートに、より巧妙になった人種差別を描き出す。差別する側がそれを偏見や差別と感じないままに、怠慢や無視の枠の中で行っている差別。グレゴリー・ハインス演じる現代風人権弁護士が、その結果を見せつける。 ★★★★

13-17『天才作家』

殺人事件に関わる二人の文学者。捜査編では彼のファンである刑事とのウィットの利いた対話で人生における殺人行為の意味が、法廷編では精神科医との対話で刑罰の意味が語られる。そして終局、検察にのしかかる法の重み。異色作にして傑作。★★★★★

13-18『灰色のクルージング』

花形のプロバスケ選手とその麻薬中毒の兄。何が二人の運命を切り分け、なぜ殺人起こったのか。真相までのプロセスにひとひねりあって盛り上がるが、暴いてみるとどこかで見た話。ダメ兄役の容貌の作り方は巧いけど、演技に迫力がいまひとつ。★★★

13-19『抑圧された記憶』

邦題ネタバレシリーズ。霊能力者が事件の中心となるが、他の番組とちがいぜんぜん派手にならないのがLaw&Orderらしい。他方、この設定はテーマを掘り下げるには中途半端な感もする。ブレア・ブラウンが弁護士役なのにもったいない。★★★

13-20『見返り』

お受験殺人事件。様々な人種や職業の親たちの思いが絡み合う、幼稚園受験の不条理な状況が描かれる。格差の大きな社会での受験戦争は規模は大きくないがより先鋭化しているんだな。状況が複雑で筋が追いづらいが、ラスト、犯人の格差への怨嗟が胸に来る。★★★★

 13-21『危険な治療』

体を酷使する労働から救いを求め際どい鎮痛剤を求める人々。それを処方する医師たちの責任を、誤飲事件を通して告発する。裁判の最後までわからなかった事件の謎が、最後にすっと紐解かれ、呆然とするとともにこの医療問題の危険性が明確に伝わる。★★★★

13-22『間違った絆』

テロを思わせる連続狙撃事件で刑事編はなかなかスリリングな展開。後半は打って変わって意外な犯人の背後にある二重の犯罪に焦点が移る。こちらも魅力的なシナリオなんだが難点は、連続殺人の動機となる背後の犯罪は、さすがにこじつけに見えること。★★★★

13-23『4組のカップル』

一本道のはずの脚本に第二、第三の事件が加わり、なんと計4組の恋愛模様ならぬ殺人模様を描くだけのエピ。シーズンフィナーレ前の異例の脚本だが、“犯罪が主役”という意味では醍醐味がある。他人の恋愛で頭を抱える刑事や検事補の可愛いこと。★★★★

13-24『疑惑のコメディアン』

セレブの家の火災の捜査が、思いもよらぬ醜悪な犯罪を暴きだす。寓話さながらに二人の子供の人生を秤にかけた親たちに、同情を感じるべきか嫌悪を感じるべきか、考えさせられる。コメディアン、ラリー・ミラーが本人役で登場。★★★★

 

 総ポイント数

95 / 120

平均

3.95

感想まとめ

終わってみると意外とポイントの高いシーズンだった。ちょっとびっくりだけど、厳しめの点数がついたエピが少なかったためみたい。目立ったのは、普段の番組のスタイルから少し外れたエピソードたち。もともとフォーマットがかっちりしているシリーズだけに、色々と工夫を凝らして楽しませてくれる。

ちょっとしたトリビア

第3話、美容整形の豊胸インプラントはシリアル番号が入っているので、遺体の身元調査に使える。

第7話、バーで女をひっかけた弁護士が違反したと言われるアメリカ憲法修正38条は、存在しない。現行憲法では修正27条まで。なにかのアーバンスラングかな?

第13話、kangaroo court カンガルー裁判とは、いかさま裁判のこと。alcによると語源はカンガルーがジャンプするようにとんとん拍子に裁判が進む様子、またはカンガルーのいるオーストラリアを大英帝国が流刑地として使っていたことから。

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